M/SEC
Manegement/System Engineering Communication
Vol.7(1998年10月20日発行)
8月4日 水害緊急調査
〜土砂災害速報を作成〜
今年の夏は新潟地方気象台が1886年に観測を開始して以来の記録が多く出ました。
まず8月ひと月の日照時間は新潟市で111.2時間で平年の半分、平成5年の99時間に次ぐ少なさでした。ちなみに高田ではもっと少なく78.6時間で平年の4割、平成5年の93.6時間を破り最も少ない8月の日照でした。一方8月の月間降水量を見ると、新潟市で616o、上越市高田で460o、佐渡相川町で359oでした。新潟では昭和51年の430.5o、相川では平成7年の345oをそれぞれ越えこれまでの最高雨量を記録しました。8月の月間降水量を見てもトップは安田町宝珠山が853oで平年の5倍。2番目は津川町の780oで平年の5.4倍でした。特に8月4日には、最大1時間雨量が新潟市で97o(午前3時25分〜同4時25分)と過去最高。相川は50o、高田は31.5oになっていました。
このための被害が各地で発生し、特にマスコミに良く登場したのが、新潟市の浸水と道路や鉄道の寸断。笹神村の河川堤防の決壊と農地冠水及び浸水。佐渡各地の土石流発生などでした。このうち土砂災害について8月5日に緊急調査を実施しました(関係記事をP2〜P3に掲載)。
なお8月末になると停滞前線に加え台風による影響で集中豪雨が発生し、今度は関東、東北地方で死者行方不明者を多数出すという豪雨災害が発生しました。特に栃木県北部と福島県南部の県境一帯では激しい降雨にみまわれ、一部の施設が被災したことから、全国一斉に災害弱者関連施設の点検が行われ、当社も新潟県内の一部地区を担当し調査を実施しました。
・8月4日の気象状況
8月4日の午前9時の天気図を図1に示します。この天気図を見ますと停滞前線が佐渡、下越、中越地域にかかっていることが分かります。8月4日の新潟気象台の雨量のデータから見ますと100mm以上の雨量が観測されたのは、相川、両津、新潟、二王子岳、新津、赤谷、宝珠山、村松、津川、栃尾、守門岳、入広瀬です。このうち両津、新潟、宝珠山、守門岳、入広瀬では200mm程度あるいはそれ以上の雨量を観測しています(図2)。
こうしてみると前線の影響によって、ある一定の範囲に集中的に強い雨が降ったことが想像できます。この雨量の多い地域と被害の多い地域はほぼ一致していることが確認されています。
・総計234箇所にも及ぶ被災箇所
8月4日の未明から降り続いた雨は記録的な豪雨となり、下越、佐渡、中越地域の一部に多大な被害をもたらしました。被害の多くは、河川の決壊や土砂崩れなどであり、道路が寸断されているところや、家屋が浸水や倒壊などの被害にあっている所もありました。
各地域での被害概況は次の通りです。
下越地区の被災ヶ所の分布を見ると三川村の北側を流下する河川沿い(阿賀野川右岸の新谷川及び中ノ沢、石戸川沿い)に集中的に発生していました。
佐渡地区の被災ヶ所の分布をみると、相川町達者付近と両津市東立島付近を結ぶラインに集中して発生していました。
中越地区での被災ヶ所の分布は、栃尾市の南方に集中していた。
印象と守門村から入広瀬村でも多発している傾向がありました。
(調査部 小林 雄三)
台湾の地すべり技術
9月13日から20日までの8日間、青木顧問、企画開発部佐藤課長、(筆者)鴨井の3人で台湾へ出張した。今回の訪台の目的は、@当社が技術協力している梨山地すべりの調査と対策について、(財)中華顧問工程司(台湾で最大手の設計コンサルタンツ)と台湾省政府水土保持局第二工程所(発注者)とからそれぞれ『技術顧問を依頼された』こと、A台中市で開催予定の第二工程所主催の『地すべり技術講演会の講師として招聘された』こと、の二つであった。
今回の訪台はご多分に漏れずハードなもので、とくに最終日は終日検討と討論に明け暮れ、討論終了後は3人で分担してレポートの作成に取りかかり、A4版で10数ページを書き上げ、夜の8時過ぎにようやく解放されるといったあんばいであった。
・梨山地すべりを見ると・・・
13日夜に台北に到着した後、翌14日には中華顧問工程司本社でこれまでの経過と具体的な検討課題について検討会をもち、午後は豊原市に移動して、第二工程所と水土保持局を訪問した。15日にはさっそく現地におもむき、調査にはいった。
梨山地すべりについては、当初新竹懸にある工業技術研究院が調査し、対策工を設計したのを受けて、現在は中華顧問工程司が施工管理と追加対策工事(排水トンネルなど)の設計を担当している。すべり面の動態観測には当社の傾斜センサーが採用され、順調に作動している。
施工の進捗状況は予想以上に速く、当初計画の集水井工事がほぼ完成に近づき、排水トンネルもすでに発注されているといった状況であった。しかし、調査・設計の面では必ずしも順調ではないように思われる。
・いくつかの問題点の整理
それらの問題点をいくつかまとめてみる。
これらは決して『他山の石』ではないと思う。今回の訪台の目的は、まさにこうした点を改善し、対策工法の適切な選択と配置についてアドバイスすることにあったが、予想以上のスピードで工事が進展しているため、こちらの意見を直接反映させることは叶わなかった。私たちは正直にこれらの問題点を指摘して、どうあるべきか意見を述べた。担当の何泰源さんは、“今回は良い勉強になりました”と素直に本音を述べていたので、次からはかなり改善されていくものと思われる。
9月15〜16日の梨山での現地調査の後、第二工程所に立ち寄り、所長室で以上の所見を述べた。なお、 所長たちは、この後中国本土(成都)で開催される初めての“中台地すべりシンポジウム”に向けて9月20日に出発する予定とのことであった。
・盛況な講演会
9月17日は台中市での講演会に臨んだ。会場は台中市で1〜2を争う五つ星ホテルである長榮桂冠酒店(台湾では大飯店はシテイホテル、酒店とつけば一流ホテル)である。講演会の講師は私ども3名だけであり、通訳を介して行われた。また、当日は製本された立派なオリジナル論文集がテキストとして配布された(実物は企画と調査にあります)。それぞれの演題はつぎの通り。
聴衆はあらかじめ招待してあった人ばかりで50〜60名、昼食付きの豪華版であった。大半が役所の技術者で、ほかに台湾大学(前身は台北帝國大学)・中興大学などの大学の先生が約10名、民間技術者が数名といった構成で、住宅局の若い女性の姿も見られた。講演の後は質問責めに会い、時間切れで終わるという盛況ぶりであった。
なお、講演会に先立ち、講演会の記念として、白檀でできた木彫りの観音様が青木顧問にプレゼントされた。この木像は、現在、役員応接室に飾ってある。
・土石流災害にも取り組む
9月19日は南雲部長の紹介で、台南市にある国立成功大学防災研究センターを訪ねた。そこではセンター長の謝正倫教授から直接説明を受けることができた。当センターは、1996年の台風による土砂災害を契機に1997年2月に設立されたもので、将来は台湾全土の防災センターとなるよう期待されている。現在の専任スタッフの数は約20名で、土石流の挙動監視、緊急災害時の情報拠点、土砂害対策のマスタープランづくりなどの役割を担っている。
土石流の予知に関しては、赤外線カメラで常時監視しながら、雨量と振動による予測を目指している。しかし、正直なところ、この方法はまだ試行途中の段階であり、技術的に確立されたものではない。技術的に未成熟のまま強引に実用化した感が強く、あまりに性急すぎるという印象を持った。また、土石流の発生を察知しても、避難命令は懸長や村長などの地方政府の長が発するということなので、とても間に合うとは思えなかった。現在、この土石流監視システムは南投懸など4懸15箇所で実施しているが、近く50箇所程度にまで増やす予定という。
なお、台湾では山岳地や海岸道路を中心に土砂災害危険箇所はかなりの数にものぼっており、現在は第1段階として500ヶ所くらいをピックアップしているそうである。
これまでの一連の地すべり技術協力により、台湾での興和の知名度は確実に高まっているものと思われる。その理由は、もちろんこれまで誠意を持って接してきたことや、技術力が評価された結果と思われるが、曖昧さを極力排除し、玉虫色ばかりにはしてこなかったという点も重要である。外国との交流では、とくにこの点が大切であると思う。いいにくいことであっても言うべきことははっきり言った方が信頼される。相手はこちらの技術力に期待しているのであって、長くつき合うつもりであれば、「好々」ばかりではいられない。
ともかく、梨山地すべりは台湾における初めての本格的な地すべり調査・対策工の施工現場であり、全土から注目されている。施工にあたってはまだまだムダが多いものの、こうした試行錯誤を重ねながら、技術面で急速に向上していくものと思われる。
(調査部 鴨井 幸彦)
梨山の地すべり地とは
1.はじめに
台湾には、かつて昭和59年12月、昭和62年4月、平成9年11月に訪れ、今回で4回目で、梨山の地すべり地は3回目の訪問である。
第1回目、日本地すべり学会調査団長として訪れた時には、地すべりは今よりずっと小規模で、当時動いていた所は昨年来た時には完全に抜けていた。
何故、この付近一帯が大規模な地すべり地に広がったのか。
2.梨山付近一帯の地形と地質
上記の疑問に答えるためには、梨山一帯を広く見なければならない。しかし、この一帯の地形を広くチェックするには、5万分の1地形図が必要であるが、今回は間に合わなかった。目に入る範囲での特徴は、標高2,000m以上の山地地形で、東京西部の西多摩地方のそれとよく似ている。斜面には、急斜面と緩斜面があり、後者には上方に滑落崖をもつもの(地すべり地形)と、もたないもの(旧期土石流堆積地形)がある。このほか、段丘状の平坦面が河床から山頂までの間に大きく三段階認められる。
この地域の基岩地質は、縮尺100万分の1地質図によると、褶曲した中新世の硬質粘板岩より成り、緩斜面には、粘板岩の角礫が分布しているようである。
3.梨山地すべり地の発生
梨山地すべり地は、最高位の段丘面(標高2,000m〜2,200m)の周辺部に滑落崖が発達し、その前面に崩積土層の分布する、やや平坦な面があり、標高1,900mの遷急線(knickline)を境に、下方に新期地すべり地が分布するが、これらの詳しい区分は鴨井氏にお任せし、小生は別の視点から地すべり地を見てみたい。
梨山一帯は、約20年前頃から退職軍人用に開発された植樹林帯で、開発は、上記上位〜中位面の間の緩斜面地帯で行われた。梨の木などの果樹の植林や住居地の開発に欠かせないのは水で、緩斜面の角礫分布地帯は、それ(特に地下水)の採取に適していた。そして果樹林の開発に多量の水を斜面にまいたはずである(地内の排水路に沿って分布する多量のゴムホース群をみてもわかる)。
滑落崖をもつ地すべり地は、現在の梨山集落中心部に分布し、上述の旧期土石流堆積地帯が地すべり地に転化していったことは十分考えられる(この土石流堆積斜面は、新潟では安塚のキューピットバレーのスキー場斜面を連想していただきたい)。
もし、上述のような地すべり発生史を考えると、移動土塊対策の他に、この地域の水(地下水)利用状況の把握とその適正化の検討も必要であろう。
なお、工程所で御会いした旧友の中興大学謝教授も梨山問題は、水のたれ流しだと述べられていたことを付記する。
(新潟大学名誉教授、顧問 青木 滋)
温泉水利用 〜宮城県鳴子町の融雪〜
国道47号線鳴子バイパスのJR(陸羽東線)アンダー部の前後約600uを対象に、温泉排水を利用した無散水融雪施設が10月20日の共用開始を目指し急ピッチで施行されています。工事の発注は東北地方建設局仙台工事事務所であり、今回はその融雪方式について紹介します。
融雪熱源は東鳴子地区の温泉廃湯及び生活雑用水が混合した側溝排水であり、その水温は冬期13〜14℃と地下水と同程度となっています。融雪方式はこの低温水を熱源としたヒートパイプ融雪工法です。従来の温泉廃湯ヒートパイプ融雪は図−1に示すように側溝下部にヒートパイプの熱交換部を挿入したもので、廃湯の流下経路の沿線のみで利用可能でした。今回方式は、排水を1,000
l/minポンプアップし離れた計画地点まで圧送し再利用することになるもので図−2のようなヘッダー方式を採用しました。
融雪対象計画道路は、JRアンダー橋脚脇を通過しており主にスリップ事故防止等を主眼としました。施設の計画発熱量は、凍結防止熱量(90Kcal/uh)に対しては若干不足します。従ってその運転方式は冬季間の凍結、降雪時以外の時間帯も蓄熱運転させ、ある程度の降雪にも対応出来るよう考えています。
イニシャルコストは、温泉水を流下させる為ヘッダー等はすべてステンレス仕様となっており他の無散水施設と同様高価になりました。ランニングコストは、降雪時以外の蓄熱運転も考慮し冬季間600時間運転とすると約17万円程度であり、1u当りの1冬の運転コストは280円と安価です。
【各工法のランニングコスト目安】
| 消雪パイプ(散水消雪) | 100〜200円/u |
| 温泉廃湯ヒートパイプ | 250〜350円/u |
| 地下水熱ヒートポンプ | 600〜1000円/u |
| 温水ボイラー循環融雪 | 1000〜1500円/u |
| 電熱ヒーティング融雪 | 2000〜3000円/u |
自然熱利用融雪方式は、再生可能なクリーンエネルギーである一方でその供給自体が不安定であるという問題点をもっています。従ってその利用を検討するについては、路面の融雪レベル等も配慮した計画が必要ではないかと計画〜設計時で発注者に対し理解してもらえる様に説明をして行きたいと思っています。
(水工部 横山 政俊)
なお学会発表会開催校の縁もあって、数学者”広中平祐 山口大学学長”による特別講演「厳密と曖昧」を聴講しました。「曖昧な情報のため判断がつかず損害が発生することが多くあるが、この曖昧も文化の中では大きな役割を持っている。数学の世界は何事も数字ではっきりするように思っているが、理数科学は曖昧の世界を消去するために新しい発見(これも曖昧なのだそうですが)という成果を求める。そして学長の仕事は自分の意志にかかわらず、打ち合わせや会議などがやたらに多く、何となく曖昧で居ることがうまく運営する方法の一つでもある」などの内容を披露してくれました。懇親会にも出席し「新潟からようこそ」と気軽に挨拶をしてくれました。
(企画開発部 坂井 俊介)
ST集排水工法で防災技術、技術審査証明取得
平成10年8月10日(財)砂防・地すべり技術センターにおいて、ST集排水工法の「砂防技術・技術審査証明書」の授与式が行われました。
平成2年6月に沖見地すべり地において試験施工を実施して以来、これでST集排水工法も公認されたものと言えます。
本工法の概要は、本誌のNo.5号で取り上げられましたので、ここでは技術審査取得までの経緯を報告したいと思います。
滝坂地すべり地において、現場視察(掘削機械の構造説明および集水井内施工状況)を行った後、第1回委員会の指示事項に対する質疑応答を追加資料により行った。
砂防・地すべり技術センター矢野理事長より申請各社に審査証明書が授与された。
(営業部 安積 健一)
常時微動による地盤調査
〜地盤振動の世界〜
地表面は常に、地震とは関係なく振動しています。その振動の大きさは変位振幅にして数μm(=ミクロン。千分の1o)程度です。この微少な地表面の動きは、今から約100年位前に発見されました。その後、このような振動は、常時振動している微少な振動といった意味で、常時微動と呼ばれています。
常時微動の発生源は、交通機関や工場施設などの人工的な振動源から、波浪、風、火山活動などの自然現象まで多岐にわたっています。常時微動は、地震観測の際には単なるノイズでしかないのですが、それ自身観測点の何らかの情報を含んでいるはずとの観点から観測・研究が始められました。つまり、常時微動の発生源は様々ですが、その総合された振動は地盤を介して伝搬するうちに地盤の特性を帯びるようになり、地盤特性に関する情報を含んでいるという考えにもとづくものです。そして、常時微動を利用した地盤調査法が古くから研究されています。常時微動の振幅や周期は、場所によって異なりますが、一般に常時微動の特徴として、硬い地盤では振幅が小さくて周期が短く、逆に軟らかい地盤では振幅が大きくて周期が長い傾向にあること、また、常時微動の周期が地震の際の周期と一致することがあげられます。このように、地盤特性に関する情報を含んでいるため、いかに常時微動の特性から地盤特性や地下構造の情報を抽出するかという実用的研究が現在も盛んに行われています。
どんな記録が
ここで、その一例を紹介します。新潟市内で、耐震設計の際に必要な地盤特性を知るために常時微動計測を行いました。観測点の地盤状況は、ボーリング調査によって、地表から粘性土・砂質土互層、深さ約130m以深から工学的な地震基盤と考えられる埋没段丘礫層が確認されました。そこで、地表面と併せて、ボーリング孔内の深さ136mの基盤に微動計を設置し、同時に常時微動を計測しました。その計測結果を図1〜5に示します。図1、2はそれぞれ地表と基盤の振動速度波形(南北成分)です。地表面では速度振幅約1×10−3p/sec、基盤では速度振幅約0.1×10−3p/sec(変位振幅は地表で1ミクロン、基盤で0.1ミクロン程度)です。図3、4はそれぞれ図1、2の周期特性を表したものです。建築構造物の分野で重要な周期0.1sec以上に注目すると、地表面では周期0.45sec(図3)、基盤では周期0.3sec(図4)にピークがあることが分かります。これは、図1、2に示す波はそれぞれ周期0.45sec、0.3secの成分の波が大きいことを意味しています。
また、周期領域で(図3)÷(図4)としてスペクトル比すなわち伝達関数を表したものが図5です。周期0.5secにピークがあり、ピークの値は18であることが分かります。このピーク値は、基盤−地表間の増幅倍率を示しています。
地震の際、地震動は基盤の上にのっている軟らかい地盤を経て地表面では周期0.5secの成分が卓越した振動になります。従って、この地盤上では0.5secの固有周期をもつ構造物が最も揺れやすく危険であることになります。
このような地盤や地震動の特性が分かると構造物の設計では、構造物の固有周期を地盤の卓越周期より長くするなど、地震の際に揺れにくくする検討が行われます。
常時微動計測を用いた地盤調査例を紹介しました。現在、当社ではこのように常時微動を用いた地盤調査に関して、計測装置・計測技術・解析技術が整っています。
(企画開発部 笹川 考義)
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